大半が市民病院の医療費未納

約4億8000万円の債権が放棄された豊橋市民病院
 豊橋市は、 回収できなかった市民病院の診療費など、 約5億円の債権を放棄した。 3月1日に開会する市議会3月定例会で報告する。 報告は、 昨年4月に施行された市債権管理条例に基づくもので今回が初めて。

 放棄した債権は、 市営住宅の使用料667万円▽市民病院の診療費など4億7717万円▽水道料金2395万円。

 いずれも料金を納めるべき人が生活に困窮して支払い能力がなかったり、 行方不明になったりして回収できなくなった債権で、 同12月末に放棄したという。

 市は条例制定に合わせ、 債権の徴収などを専門に扱う 「債権管理室」 を創設。 徴収経験が豊富な職員や法律に詳しい法科大学院出身者を配置した。

 各課でバラバラだった対応を統一するため徴収時のマニュアルを作成したほか、 研修を重ねて職員に債権回収のポイントの周知を徹底。 多重債務やお金があってもあえて払わない人など、 難しいケースには専属職員が対応してきた。

 料金が納付されなければ督促状を送る。 それでも債務者が応じない場合はさらに催促し、 支払い能力の有無を確認。 払える人なら預貯金を差し押さえるなどし、 本当にお金がなければ状況を見て待つこともある。

 放棄した債権のほとんどを占めるのは市民病院関連で、 中でも入院にかかった費用が最多の約4億2000万円。 次いで外来での医療費の未納が約5600万円。

 欠損分は企業会計内で穴埋めができると市は説明するが、 それだけもうけが少なくなるのも事実。 市民病院の場合、 その性格上、 けが人や病人が来院すれば診ないわけにもいかず、 債権化の危険を常に抱えることになる。 分納などあらゆる方法を使って粘り強く確実に料金を徴収することが、 回収不能に陥るのを防ぐほとんど唯一の方策といえる。

 債権管理室の泙野善朗室長は 「支払い能力のある人には毅然とした態度で徴収していきたい」 と話している。        (中嶋真吾)

    東日新聞(ミラー版) 2012.3.2

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